PMS・PMDD

【PMDD】月経前症候群, 月経前不快気分障害の女性の臨床的特徴とストレス・コーピングについて〜研究を紹介します〜

PMDDとは、月経前不快気分症候群のことで、月経前に、気持ちが落ち込んだり、苛立ったり、気分が不安定になり、まるでうつのような状態になります。

このPMDDを改善していくために有効な手段を明らかにした研究があるのでご紹介します。

結論から先に言うと

PMDDの者にとっては, ストレスフルな出来事をポジティブに再解釈する対処方略をとることが, 月経前症状の軽減に繋がる可能性が示唆された

というものです。

ここから先は、どんな研究だったかを紹介します。

PMDDとは

月経前の黄体期に精神症状 (抑うつ, 不安, 焦燥など) や身体症状 (易疲労感, 浮腫, 乳房圧痛など) を発現し, 月経開始と共にそれらの症状が減退ないし消失するものを月経前症候群 (premenstrual syndrome: PMS) と呼びます。

さらに重度の PMS には, 著しい抑うつ気分, 不安などの精神症状を示し, 日常生活や対人関係に大きな支障をきたす者もおり, PMS の重症型として月経前不快気分障害 (premenstrual dysphoric disorder: PMDD) という疾患概念が提唱されています。

排卵周期は, 視床下部─ 下垂体─ 卵巣系のホルモンのフィードバック機構により形成されていて、PMS, PMDD はこの排卵周期性に伴って出現, 消失するため, 内分泌系の変化が発症に関連しているんですね。

とはいえ、ホルモン以外にも複合的な原因が発症に関与し, 心理・社会的要因との関連も示唆されています。

本研究では 20~ 45 歳の健常女性 303 名を対象に, 独自に作成した PMDD 評価尺度と, ストレス・コーピングを測定する General coping questionnaire 特性版 (GCQ) を実施しました。

そして、PMDD 評価尺度から PMDD, PMS と判定された者の頻度, 月経前症状の特徴, ストレス・コーピングとの関連について検討しました。

「PMDD」 と判定された者は 5.9%,「中等症 PMS」 と判定された者は 17.5% でした。

ストレス・コーピングでは,「PMDD」 の者は 「PMS なし・軽症 PMS」 の者に比べ, ストレス・コーピングの認知的再解釈傾向が低かったんです。

これはどういうことか?というと、

ストレスコーピングとは

Lazarus(1984)の認知行動理論によれば,ストレ
ス反応に影響を与える要因として

①出来事の個人的な意味合い(individual meaning).すなわちストレスに対する一次評価と二次評価
②ストレスへの対応ストレスコーピングのあり方

が大きいことを示しました。

一次的評価とは

ストレッサーにさらされたとき,それがどのくらい自分にとって害をもたらすか,脅威となるかの評価が行われる。
このとき,抑うつ,不安,怒りイライラなどネガティブな情動が喚起される.

二次的評価とは

そのストレッサーに対し,ストレスを軽減する方向でコントロールできるか否かの対処可能性の評価がされる.

つまり,われわれはストレッサーに直面したとき,自分の能力,過去の経験,自分の価値観などをもとに,ストレッサーの種類,強さの程度,解決の困難性などを評価・認知する。

解決の困難性が高ければ心理的な負担を感じ,先に述べた,さまざまな心理的・身体的なストレス反応を示すが,同時にストレッサーを解決するために,あるいは心理的な負担感を減らすために何らかの行動をとる。

これがストレス対処行動(ストレスコーピング)なんですね。

PMDD の者にとっては, ストレスフルな出来事をポジティブに再解釈する対処方略をとることが, 月経前症状の軽減に繋がる可能性が示唆された.

「PMDD」 および 「中等症 PMS」 発症の関連要因の検討から, 月経時に腹痛や腰痛のある者, または常用薬がある者は発症の危険率が高くなることが示された.

【参考文献】

月経前症候群, 月経前不快気分障害の女性の臨床的特徴とストレス・コーピングについて
秋元世志枝, 宮岡佳子, 加茂登志子
跡見学園女子大学文学部紀要, 45-60, 2009