PMS・PMDD

【PMDD】月経前不快気分障害の基礎知識~最初に読む記事~

生理の前になると心身にあらゆる症状が現れ、日常生活に支障をきたすことを月経前症候群(PMS)といいます。

そして、PMSの中でも特に精神的症状が深刻化したものを月経前不快気分障害(PMDD)と呼びます。

ご本人にも、関わる皆さんにも、それがその人のせいではなく体の不調から来てしまうことを知ってほしいと思い、まとめました。

この記事を読むメリット

・PMDDについての理解が深まる
・PMDDの対処法がわかる

PMSとは別個の疾患として取り扱われるようになったのは近年であり、まだまだ認知度が低いPMDD。

ここから、この両者の共通点と違いを解説していきますね。

PMSとPMDDの共通の原因

排卵周期は、視床下部一下垂体一卵巣系のホルモン
のフィードバック機構により形成されます。

PMS, PMDDはこの排卵周期性に伴って出現/消失す
るため、内分泌系の変化が発症に関連しています。

しかし、ホルモン以外にも心理・社会的要因といった複合的な原因が発症に関与することも示唆されていて、その原因は複雑です。

月経前症候群(PMS)の症状

国際疾病分類第10版(ICD-10) の月経前症候群診断基準を紹介します。

・中等度の心理的症状
・腹部膨満、胸部圧痛、体重増加、腫脹疼痛、集中困雞、睡眠障害、食欲の変化
この症状のうち1項目が黄体期に設当し、月経開始時に消失する

ということで、診断基準がかなりゆるく、女性の8割がその基準を満たすという報告もあります。

疾患というより、月経に伴う一般的な症状という捉え方がされる傾向もあります。

月経前不快気分障害(PMDD)の症状

PMSの中でも重症度別に分類した場合には30%が中等症、3〜8%が重症であったという報告などから、重症PMSが月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder :以下 PMDD)とされます。

米国精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(DSM-IV)』(1994)では、PMDDは”特定不能のうつ病性障害”の1つに分類されています。

さらに、DSM-5(2013年)では、独立した疾患として”抑うつ障害群”のカテゴリー分類され、抑うつ障害群の会診断名のひとつとして本文中に診断基準が記載されるようになりました。

PMDDは鬱の症状をベースに、絶望感や不安に囚われたり、攻撃的になったり、感情のコントロールができず周囲との人間関係や仕事にも支障をきたしてしまいます

怒りっぽい・抑うつ・緊張・無気力・不安・情緒不安定・妄想、涙もろい・集中力低下・疲労感・眠気・不眠・パニックなど

さらに詳しく見ていきましょう。

PMDDチェックリスト

DSM-5では以下のA~Gをすべて満たすとPMDDと診断します。

A.ほとんどの月経周期において、月経開始前最終週に少なくとも5つの症状が認められ、月経開始数日以内に軽快し始め、月経終了後の週には最小限になるか消失する.

B.以下の症状のうち,1つまたはそれ以上が存在する.

  1. 著しい感情の不安定性(例:気分変動;突然悲しくなる,または涙もろくなる,または拒絶に対する敏感さの亢進).
  2. 著しいいらだたしさ,怒り,または対人関係の摩擦の増加.
  3. 著しい抑うつ気分,絶望感,または自己批判的思考.
  4. 著しい不安,緊張および/または“高ぶっている”とか”いらだっている”という感覚.

C.さらに,以下の症状のうち1つ(またはそれ以上)が存在し,基準Bの症状と合わせると,症状は5つ以上になる.

  1. 通常の活動(例:仕事,学校,友人,趣味)における興味の減退.
  2. 集中困難の自覚.
  3. 倦怠感,易疲労性,または気力の著しい欠如.
  4. 食欲の著しい変化,過食,または特定の食物への渇望
  5. 過眠または不眠.
  6. 圧倒される,または制御不能という感じ.
  7. 他の身体症状,例えば,乳房の圧痛または腫脹,関節痛または筋肉痛,“膨らんでいる”感覚,体重増加.

注:基準A〜Cの症状は,先行する1年間のほとんどの月経周期で満たされていなければならない

D.症状は,臨床的に意味のある苦痛をもたらしたり,仕事,学校、通常の社会活動または他者との関係を妨げたりする(例:社会活動の回避:仕事,学校,または家庭における生産性や能率の低下).

E.この障害は,他の障害,例えばうつ病,パニック症,持続性抑うつ障害(気分変調症),またはパーソナリティ障害の単なる症状の増悪ではない(これらの障害はいずれも併存する可能性はあるが).

F.基準Aは,2回以上の症状周期にわたり,前方視的に行われる毎日の評価により確認される(注:診断は,この確認に先立ち,暫定的に下されてもよい).

G.症状は,物質(例:乱用薬物,医薬品,その他の治療)や,他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症)の生理学的作用によるものではない.

PMDDを自覚している人が少ない

PMDDの患者さんにはほとんど病気という自覚がありません。

有病率が5%前後ということもあり、比較的珍しい症状。

そもそも、この名前自体知らない人も多いですし「メンタルが弱い」「ただ気分が落ち込んでいるだけ」など思い、治療が必要であると認識されにくいのです。

PMDDの原因

PMSもPMDDもそれが起こる原因は人それぞれであり、必ずコレ!とはっきり決められません。

PMDDの場合、以下のような条件があると悪化しやすいことが研究で明らかになっています。

  • 神経質な性格
  • ストレスコーピングが低い(ストレスへの対処の仕方が下手)
  • 家族関係のトラブル
  • ストレスを飲酒で発散する
  • 体調不良の過敏性(気にしすぎ)
  • 月経時に腹痛や腰痛がある
  • 常用薬がある
  • 看護師を対象とした研究では夜勤がある者
  • 喫煙
  • カフェイン
  • 季節性うつを発祥する者

PMDDは「○○さえすれば簡単に治る!」という単純なものではなく、心も体も人間関係も、全体的にバランスを整えていく取り組みが必要です。

PMDD経験者の声

去年、この症状でまさに婦人科と精神科を行ったり来たりしました😅
奥が深いですね~

PMDDを放置するデメリット

人間関係に支障をきたす

PMDDは心の症状のコントロールが本人でもコントロールが難しいもの。

旦那さん、上司、同僚、親御さん、などとの問題になりやすいく、周囲の人もどう対処していいのかわからず、ケンカのもとなります。

毎月毎月、気分が不安定になり、衝突を繰り替えしていては、やがて関係性が崩れてしまいかねません。

本人の精神状態も悪化する

誰もそれを病気とは疑わず、「情緒不安定」「性格上の問題」などと勘違いされてしまうと、本人への信頼感がウ品割れてしまいます、

まだ、本人も自己否定や自己嫌悪に陥ってしまったり、「この辛さはあなたには理解できないでしょ」と卑屈になってしまったりします。

セルフケアの仕方

専門家に相談することは大前提として、あなたが日常生活でも気をつけることが大事。

というわけで、心身に良い基礎的な内容をまとめました。

①カラダの症状が重い場合

・適度な運動と休息を心がける
・1日2~3食バランスのいい食事をとる(ビタミン・ミネラル、たんぱく質、脂質の補給)
・コーヒーや糖質、アルコール、刺激物を減らす
・一日の終わりには入浴をする
・睡眠不足を避け、日付が変わる前には寝る。

こんな風に、適度な運動、休息、食生活の改善が必要です。

②心の症状が重い場合

・自分を責めない。気分の浮き沈みはホルモンのせいだと思う
・すべてに完璧を求めない
・ストレスを溜め込まないように、好きなことをして楽しい時間を過ごす
・ヒトと会うことで消耗するなら仕事や予定を減らし、リラックスできる時間を確保する

こんな風にリフレッシュ・リラックスを意識しましょう。

また、ストレスフルな出来事をポジティブに再解釈する対処法をとることで、月経前の症状の軽減に繋がる可能性が研究で示唆されています。

1人で抱え込まずに健康のプロへ相談を

こんなことが症状悪化に関係することは研究で明らかになっています。

病院を受診して婦人科疾患の有無をチェックすることは大事です。

とはいえ、
婦人科のDr.は精神的なことがわからないし、
精神科Dr.は婦人科の事はわからないし…
となりがち。

そこで、自律神経やホルモンバランスを整える東洋医学の出番!

婦人科も、心のことも同時にケアすることができるのが鍼灸の強みです!

最後に

原因がわからずにコントロールの効かない自分と一人で向き合い続けるのは本当に辛いことです。

「自分のせい」じゃなく「ホルモンのせい」だとわかるだけで心が軽くなる人が、きっとたくさんいるはず。

自分がPMDD(月経前不快気分障害)と知らずに苦しみ続ける人が一人でも減るきっかけになれば幸いです。